身体的疾患の原因が認められないにもかかわらず繰り返し身体症状を訴え、医学的には異常が無いことを説明されも受診や検査を執拗に繰り返すことがあります。例え何らかの身体的な疾患があったとしても、その疾患の性質や程度からは、訴えの強さや生活上の困難を十分に説明できません。身体表現性障害には、下記の疾患が含まれます。

主な疾患

  1. 身体化障害
  2. 心気障害
  3. 身体表現性自律神経機能不全
  4. 持続性身体表現性疼痛障害(疼痛性障害)

身体化障害

多彩な身体症状が長年続き、苦痛が強炒め、日常生活が症状にとらわれがちになります。検査を繰り返したり専門医の診察を受けたりしても、はっきりとした原因が分からないことが少なくありません。医学的に問題が無いことを説明した直後は理解したように見えても、しばらく時間が経つと医学的に「異常が無い」という説明を受け入れられなくなることがあります。精神科の受診に至るまでに数年かかることが多いです。

主な症状

身体症状としては、腹痛や膨満感、悪心などの消化器症状、胸痛などの循環器症状、排尿困難や生殖器に関する不快感や痛み、皮膚症状、整形外科的な身体の痛みなどがあります。
身体化障害ではうつ病に認められる抑うつ気分や興味の消失、意欲の低下などの症状は目立たないことが多い一方、時間の経過とともにうつ症状が顕著となり、うつ病を併発したり、診断が変更されることもあります。

原因として心理的な葛藤やストレスが関わることがあり、ストレスを軽減することで症状が和らぐ場合があります。しかし、そのようなストレスとなるような悩みが見当たらないことも少なくありません。

治療法

環境調整、抗不安薬や抗うつ薬などの薬物療法のほか、運動や作業が有効なこともあります。独居による孤独感や不安が背景となり、身体症状年て表れる高齢の方も一定数いると考えられています。

ICD-10における研究用診断基準

  1. 2年以上に及ぶ多彩かつ易変的な身体症状の訴えが存在し、それを説明しうる身体的な障害が見いだされないこと(身体的な障害の存在がはっきりしていても、症状の強さ・範囲・多様さ・持続、または症状に伴う社会的な機能障害を説明しえない)。もし症状の中に自律神経刺激によることが明白なものであったとしても、特に持続性でも苦痛を伴うものでもなければこの障害の主症状とはならない。
  2. 症状へのこだわりは長く続く苦痛によってもたらされ、相談あるいは通常の検査を求めてプライマリーケア医や専門医を(3回以上)繰り返し受診する。患者が、経済的あるいは物理的に手の届く範囲内で医療サービスが得られない場合には、持続的に自分で薬を飲んだり地域の祈祷師を何度も訪れたりしていること。
  3. 身体症状を説明するだけの身体的原因がないという医療者側の説明を、医学的検索の直後または数週間という短期間を除いては頑固に拒否すること(そうした際保障の短期間、つまり検査中あるいは検査直後の2~3週間だけ説明を受け入れるような場合はこの診断を付してよい)。
  4. 次にあげる項目の内、別々の2系統以上の症状群から、遭わせて6症状以上認めること。
    消化器症状
    1. (1)腹痛
    2. (2)悪心
    3. (3)膨満感やガス充満感
    4. (4)口腔内違和感、舌苔の肥厚
    5. (5)嘔吐または食物の逆流の訴え
    6. (6)腸蠕動亢進と低下または下痢の訴え
    循環器症状
    1. (7)安静時の息切れ
    2. (8)胸痛
    泌尿器症状
    1. (9)排尿困難または頻尿の訴え
    2. (10)生殖器内またはその周囲の不快感
    3. (11)膣分泌の異常または増加の訴え
    皮膚と疼痛症状
    1. (12)皮膚のしみや変色の訴え
    2. (13)手足・上下肢・関節の痛み
    3. (14)不快な痺れやひりひりする感覚
  5. 主な除外基準:統合失調症とその関連障害、気分(感情)障害、あるいはパニック障害の罹病期間中だけに起こっているものではない。

心気障害

身体症状を誤って解釈し、「がんなどの重篤な病気にかかっている」という確信や、それに伴う恐怖心・不安が強く、社会生活に大きな支障をきたします。医学的な検査や説明によって、こうした考えが修正されることはほとんどありません。

一般人口の有病率は不明です。性差は無く、一般の医療機関における有病率は4〜9%という報告があります。うつ病や不安障害など他の精神疾患の合併率は約80%という報告もあります。重度のうつ病では心気症状が妄想に至ることがあり、うつ病との鑑別が重要になります。
治療は、身体化障害と同様に、ストレス軽減などの環境調整や薬物療法などを行います。

ICD-10における研究用診断基準

  1. 次の(1)、(2)のいずれかがあること。
    1. 6か月間以上持続する、2種以上の重度な身体疾患があると持続的に確信していること(そのうち1つ以上は、患者自身により病名を特定されていなければならない)
    2. 奇形や集計ではないかという持続的な拘り(醜形恐怖障害)
  2. 確信や症状へのこだわりのため、患者は執拗に悩んで日常の仕事に支障をきたし、また医学的治療や検査(または地域の祈祷師による同様の援助)を求めることになる。
  3. 症状または身体の奇形を説明するに足りる、身体的原因がないという医療者側の説明を、医学的検査の直後または数週間という短期間を除いては頑固に拒否すること(そうした際保障の短期間、つまり検査中あるいは検査直後の2~3週間だけ説明を受け入れるような場合はこの診断を付してよい)。
  4. 主な除外基準:統合失調症とその関連障害、気分(感情)障害の罹病期間中だけに起こっているものではないこと。

身体表現性自律神経機能不全

系統的器官における自律神経症状として、動悸、発汗、紅潮、振戦など、他覚的な自律神経亢進に基づく症状が特徴です。詳細な疫学は不明です。症状は身体化障害と重なる部分が多く、鑑別が困難な場合があります。
治療は、身体化障害と同様に、ストレス軽減などの環境調整や薬物療法などを行います。

ICD-10における研究用診断基準

  1. 次の系統または期間のうち1つまたはそれ以上に、患者が身体疾患とみなす自律神経性の刺激による症状があること。
    1. 心臓及び心血管系
    2. 上部消化管(食道・胃)
    3. 下部消化管
    4. 呼吸器系
    5. 泌尿生殖器系
  2. 次の自律神経症状のうち、2項目以上があること。
    1. 動悸
    2. 発汗(熱汗もしくは冷汗)
    3. 口渇
    4. 紅潮
    5. 心窩部の不快感、胃部のどきどきする感じ、胃をかき回される感じ
  3. 次の症状のうち、1項目以上があること。
    1. 胸痛、前胸部およびその周囲の不快感
    2. 呼吸困難、過呼吸
    3. 軽度労作時の過度の疲労
    4. 空気嚥下症、吃逆、胸部・心窩部の灼熱感
    5. 腸蠕動亢進の自覚
    6. 頻尿、排尿困難
    7. むくんでいる、膨らんでいる、重苦しいという感じ
  4. 対象者がこだわっている系統や器官の構造や機能に障害があるという証拠を欠くこと。
  5. 主な除外基準:恐怖症性障害またはパニック障害の存在下においてだけ見られるものではないこと。

持続性身体表現性疼痛性障害(疼痛性障害)

身体部位の痛みを中心とした訴えが長期間持続します。さまざまな治療に対して効果が乏しく、精査を行っても原因が不明な場合が多いです。例え原因となる身体疾患があっても、痛みを説明できる程度の器質的要因は認められないことがあります。

当初は内科、外科、整形外科などを受診されることが多いですが、痛みに対するこだわりが強く、各科の治療効果が乏しい場合があります。不眠や抑うつなどの精神症状を伴うことが多く、その後、主治医に勧められて心療内科や精神科を受診されることがあります。

心理的要因が関与していることもありますが、不明であることも少なくありません。
治療としては、三環系抗うつ薬、SSRI、およびSNRIなどの抗うつ薬や抗不安薬を中心とした薬物療法のほか、精神療法、心理教育、認知行動療法などがあります。さらに、精神科リハビリテーションが行われることもあります。日常生活における軽度の運動により、痛みが和らぐ場合もあります。鎮痛薬や抗不安薬への依存が生じている場合もあるため、薬物療法には注意が必要です。

ICD-10における研究用診断基準

  1. 身体のさまざまな部位において持続性(6か月以上の間、ほとんど毎日のように続いて)で重度な不快な疼痛がある。その痛みは生理的過程または身体的障害によって十分に説明のつくものでなく、常に患者の最大の関心の的であること。
  2. 主な除外基準:統合失調症とその関連障害の存在下、あるいは気分(感情)障害や身体化障害、鑑別不能型身体表現性障害および心気障害の罹病期間中だけに起こっているものではないこと。